2020年、29冊目の読書感想です。
Good old boys (集英社文庫(日本)) [ 本多 孝好 ]
一番弱いのに、一番楽しくサッカーをやれる「牧原スワンズ」の四年生チーム。公式戦では一勝はおろか、まだ一点も取ったことがない市内屈指の弱さを誇っている。今年最後の公式戦となる市大会に挑む子どもたち。しかし、チームの活動を手伝う父親たちは、それぞれに悩みを抱えていた。八組の家族のありようとその成長を描き、すべての頑張るお父さんと子どもたちへあたたかなエールを贈る物語。
内容紹介(「Book」データベースより)
本多孝好さん、20年ぶり?くらいに手に取ったのですが、とっても良かった!
ハートフルで心温まる1冊です。
弱小サッカーチームのリアル
突然ですが、我が家の男児たち(小6長男・小3次男)は、スポーツ少年団のサッカーチームに所属しています。
市内にスポ少のサッカーチームがいくつもありますが、我が子たちが所属しているチームは・・・、それらチームの中で最弱と言ってもいいと思います。
試合で勝てるなんて、ごくごくまれで。
まぁとにかくぬるいチームなの。
練習もぬるいし、行動もぬるい、メンタルもぬるい。
そりゃー弱いでしょうねっていうのは、サッカーなんて良く知らない私でも分かるくらい。
なので、この「Good old boys」の「市内屈指の弱さを誇るサッカーチーム」という設定には、食いつかないわけがないですよね・・・。
そんなわけで読み始めた1冊ですが、読めば読むほど。
あれ?これ、うちのチームのこと書いてるんじゃない?
っていうくらい、弱小サッカーチームのリアルが描かれていました。
練習中だけでなく全ての行動がダラダラと緩慢で。
試合会場での空き時間は、他チームの試合を見るでも練習するでもなく、遊具で遊んで叱られ。
試合開始時も円陣を組んだりせず。
「キャプテン」という存在がおらず、試合ごとに持ち回りでキャプテンを回す。
・・・。
はい、はい、はい!
それ、うちの子供たちのチームでーす!!
いやー、私も最初の頃はこの「ダラダラ感」にビックリしたよね。
だってスポ少って、どっちかと言うと「スポーツの技術」そのものよりも、「礼儀」とか「キビキビした行動」みたいなものが育まれることを期待しません?
そんなの、ゼロですから(;’∀’)
とは言え、それは良くもあり悪くもありというか、そんなぬるいチームだからこそ続けていける子もいるわけで、「こういうチームがあってもいいよね」と私も思ってはいます。
ということで、ブンブンと首を縦に振りたいくらい分かりみの深いシーンが多く、とっても楽しめた1冊でした。
それぞれの父親の葛藤
と、サッカーチームを舞台にしたストーリーではあるのですが、メインはそこに所属する少年たちではなく、少年たちの父親。
8人の父親の視点で順番に紡がれていくのですが、みんな、それぞれ大人として悩みや問題を抱えているわけです。
妻との関係だったり、仕事でぶつかる理不尽さだったり、外国籍であるがゆえの困難だったり、子供の不登校や非行だったり・・・。
この父親たちのサッカーチームへの関わり方は濃淡があって、積極的に練習を手伝う父親もいれば、ほとんど顔を出さない父親や、試合の時だけ応援に来る父親もいる。
リアルのサッカーチームでも同様だと思うのですが、積極的に手伝っている側から見ると、ほとんど来ない親はフリーライダーに見えるというか、すこーし苦々しく思ってしまいますよね。
でも・・・これを読んで、月並みですけど。
みんな、いろいろあるよね。
と思った私。
子供を通じてつながる人間関係というのは、どうしても「誰々のパパ」「誰々のママ」という存在でしか認知しないけれど、その人たちだって1人の人間で、それぞれの世界があり、それぞれの事情を抱えている。
我が子の活動に関われる親もいれば、関われない事情がある親もいる。
そんな当たり前のことに気付かされたような気がしました。
ここで登場する父親たちの問題や悩みは、キレイに解決するような描かれ方はしていないですし、結末がハッキリ描かれないものもあります。
でも、どのストーリーも前を向いた明るいシーンで終わっていて、とても読後感が良く、自分も「よし、頑張ろう!」とエールをもらえたような気持になる1冊でした。
どの父子のストーリーも良かったのですが、私的に一番グッと来たのは「ヒロ」という少年の父親の章。
ヒロの兄は難関をくぐり抜けて私立の中学校に合格したにも関わらず、とある事情で学校に通えなくなって引きこもっており、そんな息子への接し方に父親は悩んでいるのですが。
その父親にヒロが、サッカーチームの監督が教えてくれたという「仲良くなる言葉」、喧嘩した人と仲直りしたり知らない人と仲良くなったりするときに言えばよいというたった一言を教えます。
深夜、家を抜け出したヒロの兄を父親が追いかけ、その「仲良くなる言葉」をかけるシーンは、ほんとーにグッときます。
その言葉が知りたい方、ぜひ本編を読んでみてくださーい!
最弱チームは勝てるのか?
それぞれの父親の葛藤を淡々と描きつつ、子供たちの側では、チームを去らなければいけない子のために「勝ち」に対する執念をむき出しにし始めるのですが、それを見つめる父親たちの「親心」と、「何としても1勝を」と最後の試合に挑むクライマックスは感涙必至。
勝てなかったチームは勝てたのか!?
ゴールネットを揺らしたのは誰のシュートなのか!?
試合のラストシーン、一瞬音が聞こえなくなったかのような静寂とスローモーションのような描写は、文章とは思えない映像のような見事さです。
いやー面白かった!!
子供時代にスポーツをやっていた方にも、今、自分の子供が何かスポーツに取り組んでいるという方にも、ぜひ一読をおススメしたい1冊です♪
以上、【Good old boys】読書感想でした!
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