感染症の雑学集と日本の立ち位置。【感染症の世界史】石弘之

ノンフィクション
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ステイホームにつき通勤時間ゼロ→読書時間激減で、更新の間が空いてしまいましたが・・・。
2020年、ようやく30冊目の読書感想です。


感染症の世界史 (角川ソフィア文庫) [ 石 弘之 ]

地上最強の地位に上り詰めた人類にとって、感染症の原因である微生物は、ほぼ唯一の天敵だ。
医学や公衆衛生の発達した現代においても、日本では毎冬インフルエンザが大流行し、世界ではエボラ出血熱やデング熱が人間の生命を脅かしている。

人が病気と必死に闘うように、彼らもまた薬剤に対する耐性を獲得し、強い毒性を持つなど進化を遂げてきたのだ。
40億年の地球環境史の視点から、人類と対峙し続ける感染症の正体を探る。

内容紹介(「Book」データベースより)
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感染症の雑学集

中世におけるペストやマラリアの流行から、エイズやエボラ出血熱、近年の記憶に新しいSARSに至るまで、様々な感染症について、医学的・科学的な観点だけでなく「社会」に対して及ぼしたインパクトを絡めながら解説している1冊です。

上述のようなよく耳にする感染症でも、具体的な病状や原因って知っているようで実はよく知らないものが多くて、その辺りの基本的な知識がざっと分かるのと同時に、感染症にまつわる雑学集・・・という側面もあって、(若干不謹慎ですが)なかなか面白かったです。

たとえば、

日露戦争の際に軍隊内で流行したチフスのために陸軍が開発したのが「征露丸」。
「ロシア(露)を征する」から名付けられているわけですが、これが後の「正露丸」として、ご存じのとおり今でも使われている。

とか。

アメリカ大陸にはヨーロッパから天然痘やハシカなどの病気がたくさん持ち込まれ、先住民の多くはそれらの病気で命を落としたが、時に先住民をせん滅させるために病気を意図的に利用していた・・・。
(ハシカ患者の衣服を先住民に渡したりしてたんだって!!)

とか。

2002年に流行したSARSの感染が拡大した一因には、高層マンションの下水管設備の不備で、感染者の飛沫や糞沫に含まれていたウイルスがトイレの換気扇に吸い上げられてマンション内に拡散した可能性が高いことがある。

とか(それ、防ぎようがないよね)。

あと、

トキソプラズマに感染するとドーパミンの分泌が促され、結果として性格が変わったかのようになる(反射神経が鈍くなるのと同時にリスクを恐れなくなり、交通事故に遭う危険性が2.6倍になるとか?)。

という内容を読んで、昔読んだこちらの小説を思い出しました。


天使の囀り (角川ホラー文庫) [ 貴志 祐介 ]

感染すると、自分がそれまで一番恐れていたことに逆に飛び込んでいってしまう病原菌をモチーフにした小説です。
当時は、なんて独創的な設定!と小説ならではの創作バリバリなのかと思っていたんですけど、わりとリアルにあり得る設定だったんですねぇ。

日本の感染症対策の評価

で、視点を現実社会に移しますと、今般の新型コロナ対策において、日本って感染者数も死者数も欧米諸国と比べてとーっても低く抑えられてますよね。
(実態をとらえきれてないかもしれないですが、それは日本だけに言えることじゃないと思ってます)

でも、なぜか国際的な評価はあまり高くない・・・。
最近は流れが変わってきましたが、4月頃はかなり酷評されていたように思います。

素人の私からすると、日本の医療水準というのはそこそこ良いのではないかと思えるし、実際新型コロナへの対策も功を奏しているように見えるのに、どうして評価が高くないんだろう?というのは疑問に思うところで。

でもこの本に、国際標準からすると日本の防疫政策というのは「後進国」と見なされていると書かれていて、なんだか腑に落ちた気がしました。

特に「ワクチンで防げる感染症」の予防については、日本の国際的評価は先進地域の中では最低レベルで、ハシカ、水ぼうそう、おたふくかぜ、結核なんかが流行するのは先進地域では日本くらいなんだそうな。

それゆえ日本から外国にハシカや風疹を輸出してしまうこともあり、「渡航注意」の勧告が出されることもあるなど、衛生上の問題を抱えた発展途上地域並みの扱いとも言えるレベルなんだとか。

なので、日本の防疫政策への信頼度が低いという前段があり、それゆえ数字的に悪くない成果を出していても手放しでは評価できないという部分があったんじゃないかな~なんて思った私でした。
出来の悪い子は最初から穿った目で見ちゃう的な?
ま、勝手な推測ですけどね!

まさに「世界史」

今回この本を手に取ったのは、2014年の初版出版時点で「次のパンデミックは中国が震源地になるであろう」と、まるで新型コロナの大流行を予測していたかのようなことが書かれている!と話題になっていたからでした。

が、その部分は最終章のほんのオマケ程度(本筋ではない)。

メインは、まさに「感染症の世界史」で(タイトルそのまんまですけど)、中世から現代までの感染症をざっくりと俯瞰できるお手頃な1冊だと思います。
科学的な部分はそこまで掘り下げた内容ではないと思いますが、「えーそうなんだ!」というところも結構あって、読み応えはアリです。

以上、【感染症の世界史】読書感想でした!

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