読者心理を白日の下にさらす。【文壇アイドル論】斎藤美奈子

書評
スポンサーリンク

2020年、4冊目の読書感想です。


文壇アイドル論 (文春文庫) [ 斎藤 美奈子 ]
※リンク先、欠品しております。

スポンサーリンク

内容紹介

文芸書評家の斎藤美奈子さんによる「作家論」・・・ではなくて、「『作家論』論」。

その時代時代で、メディアの寵児として持ち上げられる作家というのはいるもので、そういった言わば「文壇のアイドル」的な作家たちが、メディアや書評家からどのように語られ、評されているのかというのを分析した1冊です。

つまり「作家」や「作品」そのものを評するのではなく、「作家や作品を評した文章」を評しているという、若干ややこしい(こじらせた)立ち位置の本と言えますかね。
斎藤美奈子さんらしいとも言えますね。

ちなみに取り上げられている作家は、

  • 村上春樹
  • 俵万智
  • 吉本ばなな
  • 林真理子
  • 上野千鶴子
  • 立花隆
  • 村上龍
  • 田中康夫

の計8名です(敬称略)。
なかなか時代を感じるラインナップでしょ笑。
単行本版が2002年出版ですからね。

斎藤美奈子さんの著作ですから分析もとーってもマニアックなのですが、それにしてもみんな作家のことをアレやコレやと語りたいものなのねと驚くと同時に、著者の斎藤さん自身も「作家」ではなく「作家論」を評するというスタンスでありながらも、やっぱりその作家に対してひと言評さずにはいられない様子が端々から感じられて、「書評家の業(ごう)」みたいなものを見せつけられる1冊でもありました。

取り上げられている8名はそうそうたる面々なので、どの方の著作も1冊くらいは読んだことがありますが(あ、田中康夫さんは読んだことないかな)、やっぱりそれなりにハマって読んだことのある作家の章の方が面白く読みました。

そういう意味で、一番面白く読めたのは吉本ばななさんと林真理子さんの章。

ばなな、コバルト文庫説?

吉本ばななさんを好んで読んでいたのは小学校高学年から中学生くらいかな~。5歳上の姉の書棚に並んでいたのを、こっそり拝借して読んでいました。
今思えば、内容うんぬんよりも「吉本ばななを読んでいる」という自分がちょっと大人になったような気がして、それが気持ち良くて読んでいたような気もしていて。

この本の中では 、「吉本ばなな=コバルト文庫」(つまりは少女小説であるということです)という持論が展開されているのですが、当時の私のメンタリティを思うと確かにその通りだなと思うんですよね。

コバルト文庫を筆頭とする少女小説はあまりに自分世代をターゲットにしているゆえ、斜に構えてしまって読む気になれず、少女小説のくくりではない(と思っていた)吉本ばななさんを読むことで「私はちょっと違うのよ」という気分になれたのが、本好き少女のプライドを満足させていたのだと思います (でも実態は少女小説を読んでいるのと同じだった) 。

そんな子供の頃の自分のちょっと背伸びしたい気持ちを言い当てられたようで、面映ゆい気持ちになった私でありました。
でも久々に「うたかた」や「キッチン」が読みたくなりました。今だとまた違う気持ちで読めそうですよね。

マリコ、ソノアヤコ説?

一方、林真理子さんのエッセイを読み込んでいたのは社会人になったばかりの頃だったでしょうか。
物欲や名声欲を隠すことなくあけすけに語るその文体が好きで、新刊が出るたびに購入していました。

ですが、メディアで語る言葉に「あれ?ずいぶんイメージと違う保守的なことを言うな~」と違和感を感じることが少しずつ増えてきて。
それが悪いというわけではなく、単なる私の勝手なイメージとの違いです。

それをこの本では、

成り上がりだった林真理子も『あっち側の人』になって、ソノアヤコ化していく

文壇アイドル論より

と書いているのです。
すんごい辛辣な言葉ですが、私が言っているわけではないのでご容赦ください(;’∀’)

この指摘が何とも言い得て妙というか、何となく感じていたモヤモヤっとした違和感の言語化の的確さに驚いた私だったのでありました。
この感覚、分かりますかね・・・!?
(とは言え、上述の評価を書いているのが2001年なので、私が違和感を感じた場面とは違うポイントを指して言っているのだとは思いますけどね)

読者心理を白日の下にさらす痛快さ

その他の作家の方たちへの文章も、「あの頃こんなふうに評されていたけど、本質はこういうことだよね」という分析がいちいち的を射ているんですよね。(内容には賛否両論あるとは思いますが)

当時好んで読んでいた自分の気持ちも白日の下にさらされるようで、いささか小っ恥ずかしいのだけどある意味痛快な1冊でした。

ある程度著作を読み込んだことのある作家が8名の中にもしいたら、読んでみるとなかなか面白いと思います♪
でもわりと批判的なスタイルなので、現在進行形で敬愛している作家さんならやめた方がいいかも?

ベストセラー好きだったあなたに

この本で取り上げられているような売れっ子作家の著作や、世間で話題になっているようなベストセラーを昔よく読んでいたな~。という方におススメの本を最後に紹介します。


趣味は読書。【電子書籍】[ 斎藤美奈子 ]
※電子書籍にリンクしています。

こちらも斎藤美奈子さんの著作ですが、「読書好き」を自称するがゆえに「ベストセラーものは読まないよ」という方たちに、代わりにベストセラーを読んで内容をさくっと教えてあげようじゃないの。という1冊。

すなわち「ベストセラーもの」に限定した書評本なのですが、2003年出版なので昔懐かしいベストセラーものがズラリとラインナップしていて「あーこれ昔流行ってたよね!!」というノスタルジックな気分になれること請け合い。
斎藤美奈子さんらしく、辛口で全方位に批判的な文章もなかなか面白いです。タイトルにもある通り「趣味は、読書。」という方はぜひご一読をおススメします♪

以上、「文壇アイドル論」読書感想でした!最後までお読みいただきありがとうございました♪

コメント

タイトルとURLをコピーしました