半世紀前の預言書。【復活の日】小松左京

小説
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2020年、26冊目の読書感想です。


復活の日 (角川文庫) [ 小松 左京 ]

吹雪のアルプス山中で遭難機が発見された。傍には引き裂かれたジェラルミン製トランクの破片。中には、感染後70時間以内に生体の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、残りも全身マヒで死に至らしめるMM菌があった。春になり雪が解け始めると、ヨーロッパを走行中の俳優が心臓麻痺で突然死するなど、各地で奇妙な死亡事故が報告され始めるーー。人類滅亡の日を目前に、残された人間が選択する道とは。著者渾身のSF長編。

内容紹介(「Book」データベースより)
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現代の預言書

こちら、初版が発行されたのが1964年。

なんと・・・50年以上前!!

そんな昔の1冊が、ここ最近にわかに注目を浴びていますね。なぜでしょう?

物語の舞台は1973年。

イギリスの軍関係の研究所から持ち出されたウイルスが、世界中に蔓延してしまうというパンデミック小説です。

最初は季節性のインフルエンザかと思われ、「たかがインフルエンザじゃないか」と見くびっている間に事態はどんどん悪化していき、驚くべきスピードで人類が死亡していく・・・。

ってどこかで聞いた話のような?

そう、まさに現在、2020年の新型コロナウイルス大流行を預言しているかのごとき内容で、SNSを中心に話題沸騰なんだそうな。
いや、気付いて発掘してきた人スゴイよね。

本書で描かれている「未知のウイルス」により世の中が大混乱に陥っていく過程。
現代社会は、まさにそれを現在進行形でなぞっているように思えて、半世紀以上前にこれを著した小松左京氏の慧眼にマジで恐れ入ります。

最初は小さな扱いだった新聞のウイルスの記事がトップ記事扱いへと変わり、国際面もウイルスの記事ばかりになり、各国が緊急措置命令を次々と打ち出す。

国内では、スポーツも娯楽もイベントが軒並み中止となり、経済指標がどんどん悪化していく。

やがて「報道の向こう側」にあったウイルスの流行が我が事へと迫り、病院へ人々が殺到して診察や治療を受けるために数時間も行列を作って待つ事態に。

病院では他科の医師や看護師までが駆り出されてさながら戦争状態。そして医師や看護師も次々とウイルスにより命を失っていく。
死体は片付けられる余裕もなく、院内の廊下や台に放置されたまま。

日本政府は非常事態宣言を出すかどうか、自衛隊を出動させるかどうかで紛糾。
都会から逃げ出して、(ウイルスが蔓延していないように見える)地方へ疎開しようとする人々と、そんな人々を入れまいとする地方の人々の間で発生する小競り合い。

・・・これ、現在のことじゃないですよ。
この小説で描かれていることですよ。

ス、スゴイでしょ(;゚Д゚) ←語彙力

めちゃくちゃリアルなんです。
しかも蔓延し始めた季節が春の始め頃という設定までもが現在の状況と重なっていて、よりリアル。

こんな昔に描かれた大混乱を、50年以上も経った世界に生きる私たちが全く同じようになぞっている・・・。
人間は進歩しているのだろうか?と愕然とさせられます。

ちなみに、本書の中にはこんな文章があって。

病原体は、それ自体のもっている毒性以外のさまざまな要素によって、はじめて社会的問題になる。まずその病原体が、まだどこでも知られていないこと。したがって早期発見が困難であること、伝染経路がわかりにくいこと、今まで知られている治療薬がきかないこと──増殖力が強いこと、それが疾患をひきおこす身体器官がきわめて重大なものであること──(以下略)

(これまでの致死率から言うと)そこまで毒性が強いとは言えない新型コロナウイルスが世界的パンデミックを引き起こしている状況を目の当たりにすると、この「毒性以外のさまざまな要素によって社会的問題になる」というのがまさに真理を突いているなぁと思った私でした。

(真偽のほどは定かではないものの)新型コロナウイルスも人為的に作られたものが漏れ出したのでは?なんて噂もありますが、もし仮にそれが真実だったとしたら、社会に与えるインパクトを最大化するよう絶妙に計算された毒性と感染力だな・・・と思わずにいられないですよね。

ただ、既存のいくつかの薬が新型コロナウイルスには効果がありそうだと言われていることが、この小説の設定とは異なるせめてもの救いでしょうか・・・。

行き着く先は・・・

とは言え、こうも現代とそっくりの過程が描かれていると、その先はどうなるの?ってやっぱり気になりますよね。

結論から言いますと・・・。

さらなる悲惨な日々が描かれた後に。

1万人程度の人間を残して、ほぼ人類は全滅するというストーリーです。

ま、小説だからね!と片付けてしまうのは簡単なのですが、でも種の滅びというのは、こういう形で気付かないうちに密やかに始まるのかもしれないな・・・と思わされるリアルさがありました。

今だから読みたい1冊であると同時に、あまりのリアルさに今読むには刺激が強すぎる1冊とも言えますかね。
新型コロナとの戦いが無事に終わった暁には、全力でおススメしたいですが。

ただ、タイトルに「復活の日」とあるように、人類滅亡でストーリーが終わるわけではありません。
とあることをきっかけに蔓延していたウイルスが無毒化され、残された1万人余りの人々が復活へ向けて歩み始めるシーンで終わるのですが、このウイルスを無毒化したものもまた、かつて人類を恐怖に陥れた軍事競争の産物だったという、なんともアイロニックな結末で。

希望のラストシーンなのか、再び悲劇へと邁進するラストシーンなのか・・・、何とも言えない読後感の1冊でありました。

おススメですが至極難解

ということで、後半にいくほど先が気になってページをめくる手が早くなってしまう本書ですが。

正直言いますと。

めちゃくちゃ読みにくいです

ウイルスの説明なんかも専門的で小難しいし、比喩も多くて文章は回りくどいし、登場人物や場面が次から次へと変わるのでなかなか頭に入ってこない。

いやぁ・・・。

昔の小説って難解だよね。

とつくづく思いました。

この時代って、皆さんこんな難解な小説を娯楽として楽しんでいたんですかね。

最近はサラッと読みやすい小説が多いので、なかなかこういう難解な文章は取っつきにくく、人間ってだんだんバカになっているのかもしれんのぅ。なんて思ってしまいました。え?バカなの私だけ?

たまにはこういう難解な文章を読んで、易きに流れがちな脳の力を鍛えた方がいいかもしれませんね。

そんな難解で骨太な小説に挑んでみたい!という方はぜひ♪

以上、【復活の日】読書感想でした!

4月は在宅勤務で通勤時間がなくなった上、家で仕事できるとなると若干ワーカホリック気味になるので、本を読む時間がグッと減ってしまいました。
今月はこれでやっと2冊目と、読書量がめちゃくちゃスローペースです・・・。

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