幕末と現代の地続き感。【渋沢栄一「日本近代資本主義の父」の生涯】今井博昭

新書
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2020年、7冊目の読書感想です。


渋沢栄一 「日本近代資本主義の父」の生涯 (幻冬舎新書) [ 今井博昭 ]

今までの分の感想は書きためていたものだったのですが、やっとリアルタイムの読書状況に追いついたよ・・・。(゚Д゚;)ゼェゼェ

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きっかけは一万円札と大河ドラマ(安直?)

渋沢栄一さん、ご存知ですか?
え?常識デスカ?

私は・・・。

良く知らなかったよね(;’∀’) ←オイ。

まぁ名前くらいは何となく聞いたことがありましたけど、具体的にどんなことを成し遂げた方なのかいうことは存じ上げませんでした。
無教養でスンマセン。

が、次の1万円札の肖像に採用されたとか、2021年のNHK大河ドラマの主人公だとか、最近にわかに名前を見聞きする機会が増えたこともあり、基本的なことくらいは知っておいた方がいいかな?とたまたま図書館で見かけたこの本を手に取りました。
我ながらほんと安直だな・・・。

「近代資本主義の父」の若かりし頃

「渋沢栄一」と言えば、本のタイトルにもあるように「日本近代資本主義の父」というのがあまりにも有名な枕言葉ですよね。
(えぇ、えぇ、知ったかぶりです)

日本最初の銀行である第一国立銀行(現在のみずほ銀行)の創設に始まり、以後500を超える数多くの銀行や企業の創立・運営に参画。社会福祉や医療事業にも熱心で、大学や病院の設立などにも数多く関わっていたそうです。

と、前書きにサラリと書かれていることだけで「オイオイ、スゲーな渋沢栄一さん」という感じなのですが、この本はそういった実業家としての業績よりも、そこに至るまでの少年〜青年期の歩みにほとんどの紙幅を割いています。

農民の家に生まれながらも、やがて尊皇攘夷に燃える志士として討幕活動に傾倒。しかしながら水戸藩の平岡円四郎との出会いを機に幕府に仕える身となり、その幕府(というか徳川慶喜)の命によりフランスへ派遣され、帰国後は大蔵省の官僚として務めた後に、いよいよ実業家として一歩を踏み出す・・・わけですが、ここまでの過程がとっても丁寧に描かれている一方で、その後の実業家としての業績はサラッとしか触れられていません。

つまり「渋沢栄一氏は実業家として何をした人物か?」ではなく、「渋沢栄一氏を稀代の実業家へと導いたもの(出会いや経験)は何なのか?」がこの本のテーマと言っていいでしょう。

なので、実業家としての渋沢栄一氏については既にある程度知っており、もう少し深く知りたい!という方が選ぶ本かもしれませんね(;’∀’)
渋沢栄一初心者としては1冊目に選ぶ本ではなかったかもしれませんが、それでも私としては新鮮な驚きが2つありました。

幕末と現代の地続き感

渋沢栄一氏が創立や運営に携わった企業には、この本の中で挙げられているだけでも、かなりそうそうたる大企業がズラリと並んでいるのです。
王子製紙、日本郵船、JR、東京ガス、サッポロビール、・・・エトセトラ、エトセトラ。

そういった現代においてもその社名を見かけない日はないような、言わば現在進行形で日本経済を支えているような大企業の設立に多大な役割を果たした人が、若かりし頃は「幕末の尊皇攘夷に燃える志士」だった。
って何だか不思議な感じがしませんか?

あ、江戸時代って結構最近なんだな。

と言うか。

あ、江戸時代と現代ってつながってるんだな。

と言うか。

当たり前っちゃー当たり前なのですが、でも幕末って、龍馬伝とか西郷どんの時代ですよ。え?そこ?
そのまだ侍が刀を差して歩いていた時代と、私たちが生きる現代が、意外と短いスパンでつながっているというその感覚が何だかとっても新鮮だったのです。

もし渋沢氏が、他のたくさんの志士と同じように討幕活動の中で命を落としていたら、日本の発展はもっと遅かったかも?なんて思うと、ちょっとヒヤリとするところでもありますね。

薩摩藩の暗躍、スゲェ!!

これ、全然渋沢栄一と関係ないんですけど・・・。

幕末において、幕府と薩摩藩が激しく火花を散らしていたことは歴史上のあまりに有名な話ですが、そのつばぜり合いは国内だけで繰り広げられていたわけではなかったんですね。

渋沢氏がフランスに派遣されていたときにパリの万国博覧会が開催されるのですが、その場での薩摩藩の策略に満ちた行動がすごいんですよ。幕府より一枚も二枚も上手で、当地の政府や新聞を巻き込んでまるで薩摩が独立国家であるかのようなイメージを浸透させていく・・・。一方の幕府は後手後手に回るばかりで何もできず。

この立ち回りの差を見ると、どちらに勢いがあるかは一目瞭然で、そりゃあ幕府は倒れるよね・・・と思わずにはいられない。
外交戦って壮絶ですよね。

こんな異国の地でも、水面下でバチバチと激しい火花を散らしていたというこの場面を、何気に私としては一番興味深い気持ちで読みました。
幕末好きの方は、このシーンだけでも楽しめる1冊だと思います♪

次に読みたい1冊

えーっと、これはこれで面白く読んだ1冊でしたが、一応「実業家としての渋沢栄一」もちょっと知りたいなぁと思って。

この辺りも読んでみたいなと思っています。


論語と算盤 現代語訳 (ちくま新書) [ 渋沢栄一 ]


渋沢栄一 社会企業家の先駆者 (岩波新書) [ 島田昌和 ]

1冊の本から世界は広がりますね。

以上、「渋沢栄一「日本近代資本主義の父」の生涯」読書感想でした!

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