飛んだ人、飛ばなかった人。【夢を叶える夢を見た】内館牧子

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2020年、22冊目の読書感想です。


夢を叶える夢を見た (幻冬舎文庫) [ 内館牧子 ]

これは「何とか人生を変えたい」、「このままでは生まれてきた甲斐がない」、「今の仕事を辞め、新しい世界に飛ぼうか、飛ぶまいか」と悩んでいる男女に送るリポートである。

まえがきより
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稀代の名著

脚本家の内館牧子さんが、夢に向かって「飛んだ」人、「飛ばなかった」人、そしてそれらの人々の「揺れ」についてインタビューした内容から、「夢を叶える」ことについて分析した1冊です。

こちら、単行本版は2002年出版ともう20年近く前なのですが・・・。

めちゃくちゃ名著

だと思います。

語られている内容は、20年経っても全く色褪せていない。

どうして今まで私はこの本の存在を知らなかったのか・・・。

もっと早く出会いたかった!!

と心底思った1冊でした。

迷える30~40代女子に(男子も?)ぜひ一読をおススメしたい!!

内館牧子さんの揺れ

内館牧子さんと言えば、NHKの朝ドラや大河ドラマを含む、数々のヒットドラマの脚本を手掛けてきた「超売れっ子脚本家」というイメージですが。
いや、それは実際その通りなんですけど。

社会人のスタート地点は、三菱重工の一般OLだったんですね。
女性社員というものが、今では考えられないくらい「腰かけ」「男性社員のサポート」として軽く扱われていた時代です。
エピソード読むと打ち震えるくらいよ・・・。
なんだかんだ言って、今の時代は平等なんだなとすごく思いました(業界によりますかね)。

「このままで終わりたくない」という強烈な思いを胸にそんな環境で13年半を過ごし、最終的には安定した大企業を飛び出して脚本家として成功した内館牧子さん。

悶々と一会社員を続けている立場から見ると、絵に描いたようなサクセスストーリーですが、そこに至るまでは相当な葛藤があったわけで。

そんな内館さんの夢に向かって「飛ぶ」までのエピソードを交えつつ(これがまた共感しきりなので、それだけでも一読の価値あり)、様々な「飛んだ」人、「飛ばなかった」人が語った「揺れに揺れた日々」が綴られています。

サクセスストーリーではなく「揺れ」にフォーカスしているところがひとつのポイントですね。
現在進行形で「揺れている」方には、ヒントになる言葉がたくさんあると思います。

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成功事例だけじゃない

こういった「夢」について語る系の本というのは、どちらかと言うと「飛ぶ」方向に向かって背中を後押しする内容のものが多いのではないかと思いますが、この本は様々な人へのインタビューから「飛ぶために必要な条件や性格」を冷静に分析していて、人によっては冷や水を浴びせられた気分になるかもしれません。

全体としては、

  • 飛んだ人
  • 飛ばなかった人
  • 飛ばなきゃ良かった人
  • 飛べば良かった人

という構成になっているのですが、前半の2つ(飛んだ人、飛ばなかった人)に属する人々は言わば成功例。

「飛んだ人」には、飛んで夢を叶えた人はもちろんのこと、飛んだものの結果として撤退したり別の道を選んだ人も含まれていますが、それでも「飛んだ」ことを後悔はしておらず、むしろその後の人生の糧にしている人たちです。

そして「飛ばなかった人」も、ここで取り上げられているのは、「諦めて現状維持を選んで飛ばなかった」人ではなく、今いる場所でこそ実現したいことがあり、積極的に「飛ばない」ことを選択した人たちです。

これらの人々が語る、迷いに迷った日々、自分に課した条件、最終的に背中を押してくれた出来事などは、確かに心に響くものがあり、今まさに「飛ぶか飛ばないか」で思い悩んでいる人には相当な後押しする力となると思います。

んが、結局はどちらも「成功例」なのです。

飛ぶも飛ばないも、そもそもそんな人生を賭けるような夢もやりたいこともないよね・・・という私のような人間にとっては、後半の2つ(飛ばなきゃ良かった人、飛べば良かった人)の章の方がより考えさせられるものがありました。

というのも、「飛ばなきゃ良かった」「飛べば良かった」と強烈に悔やんでいる人は、この本のインタビューに答えてくれていないから。唯一「飛べば良かった」人が一人だけインタビューに応じていますが、それでも匿名で。

飛ぶにしろ飛ばないにしろ、私たちの目に触れるのは成功事例だけなんだということを、これほど明らかに示すものはないでしょう。

「そんなことないでしょ。失敗談もいっぱい世の中にあるよ。」と思われるかもしれませんが、大抵の失敗談はその失敗を経て這い上がれた人が語っているだけで、現在進行形で後悔を抱えたまま這い上がっていない人の多くは語りたがらない、ということをこの本のインタビュイーの構成が如実に示しているわけです。

そして、応じるインタビュイーがいなかったという事実をこうしてありのままに書籍に載せていることが、私的にはこの本の真骨頂だと思いました。
いや、読み応えのある箇所は他にもたくさんあるんですが、これぞ、「夢を追うこと」のキレイ事ではないリアルさよ・・・と思ったのよね。

世に数多ある「思い切って踏み出して夢を叶えた人のサクセスストーリー」の後ろには、こうした語られることのない無数の失敗が横たわっているわけで、安易に「飛ぶ」ことを勧める風潮にも本書では警鐘を鳴らしています。

「一度きりの人生、やりたいことをやるべき」「やらずに後悔するより、やってみろ」「失敗は人生の糧」といった言質が世の中には溢れかえっていて、「飛ぶことこそ正解」なのではないかという強迫観念みたいなものが昨今はありますので・・・。
それに懐疑的な意見を投げかけるこの本の存在は、私にとって少しホッとするものでもありました。

揺れる時期を過ぎても

この本は、読む人の立場や心境により、だいぶ受け止め方の変わる1冊だと思います。

上でも書きましたが、「これがやりたい!」という強い夢があり、既に「飛ぶか飛ばないか」が焦点となっている場合は、後押しする1冊になるでしょうし、「何となく現状に不満はあるけれどやりたいこともないし・・・」という場合(私やん)は、安易に飛び出すのを引き留める1冊になる・・・。

そういう意味では、どんな立場の方でも何かしら心の琴線に触れる箇所があるのではないかと思います。

ちなみに私自身は、「揺れる時期」をもう過ぎた感があって。

やっぱり揺れていたのは社会人になってすぐの20代中盤(このときは転職という形で飛びました)と、子供を産んでから数年間に当たる30歳手前~30代中盤くらい。
特に30代中盤はいろんな意味で悩み深くて、飛び出す(というより抜け出す?)ためにアレコレ調べたり動いたりもしましたが、結局「現状維持」という結論となりました。

そんな悩み多き年頃を過ぎ、子供も3人となった今は、俄然、人生「守り」モード

とてもじゃないけど今は「飛ぶ」なんて考えられません。

でも・・・。

この本を読んで、「飛ばないのだってアリなのだ」と思うと同時に、いつか「飛べば良かった」なんて痛烈な後悔を抱いたりするのかな?となんていう思いもちょっとだけ芽生えました。

日々淡々と過ごしているけれど、ほんの少し立ち止まって自分の立ち位置を見つめ直したくなる1冊です。
「夢」がある方もない方も、ぜひ手に取っていただきたい。

その時々で感じ方も変わりそうなので、私も折に触れ読み返したいと思います。

以上!なんだかうまくまとめられませんでしたが、【夢を叶える夢を見た】読書感想でした。

ちなみに、内館牧子さんの悩めるOL時代をつづった本もあるんですね。

これも読んでみたい!!

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