2020年、2冊目はこちらです。
内容紹介
最近、ハマっている文芸書評家である斎藤美奈子さんの著作です。
数々の書評本を出版されている斎藤美奈子さんですが、こちらは「文章読本」に限定した書評本ですね。
単行本版は2002年出版、文庫化されたのは2007年なので、ぼちぼち古典の域に入ってきていると言ってもいいかもしれません。
「文章読本」というのは、いわゆる「文章の書き方指南書」のことで、そうそうたる文豪の方たちがそのものズバリ「文章読本」というタイトルで古来(!?)より本を出版してきています。
- 文章読本(谷崎潤一郎)
- 新文章讀本(川端康成)
- 文章読本(三島由紀夫)
- 文章読本(丸谷才一)
- 自家製 文章読本(井上ひさし)
エトセトラ、エトセトラ・・・。
(ちょっとギャグみたいですよね)
が、これら文豪たちの「文章読本」以外にも 「文章の書き方指南書」は古今東西たーくさんの人が書いているわけで。
そんなに次から次へと、みんな一体どんなことを主張してるのさ?というのを、この本の中で辛口にアレコレ比較・論評しています。
またこのタイトルが斎藤美奈子さんらしいというか、皮肉に満ちていると思うのは私だけでしょうか。
この本の感想、一言で表しますと。
めちゃくちゃマニアック(;’∀’)
というのに尽きますかね。
面白かったですが、マニアックすぎて読むのに時間がかかりました・・・。
人は文章を書かずにいられない
とにかく私が驚いたというか意外に思ったのは、そんなに昔から「文章の書き方」についての本がさかんに出版されていたという事実。書評対象の参考文献だけで膨大な量なのです。
昨今「文章の書き方」の本ってすごく流行っているような気がしていて、それはインターネットの発達により猫も杓子も文章を書いてワールドワイドに発信できるようになった(=一億総作家状態)からなのかと私は思っていました。
でもそうではなく、ずーっと昔から「文章をうまく書きたい」と願う人々も、そんな人たちに「文章の書き方」を指南する本も、少なからず存在していたということですよね。
なんだか「書かずにはいられない」という人間の性みたいなものを感じますよねぇ。
ちなみに、昭和の時代は書いた文章の発表の場は主婦雑誌などへの投稿だったそうで、その投稿をきっかけに著作を出版するに至った主婦の方もいるそうです。それって、現代の「ブログの人気化→書籍出版」と構造は一緒ですよね。
その辺りも、昔も今も変わらないんだな~と思った私でした。
文章教育に歴史あり
この本の中では様々な文章読本への(超マニアックな)書評だけでなく、「文章を書くこと」「文章を教えること」の時代による変化にもかなり紙幅が割かれていて、私としてはそちらの方が興味深く読みました。
たとえば、学校での作文教育(この作文という言葉も比較的新しいもので、戦前は綴り方と言ったそうな)において、書かせるべきは「伝達のための文章」なのか「表現のための文章」なのかという論争が激しく繰り広げられてきたとか。
そんな議論の中で彗星のごとく現れた次世代のスターが読書感想文だったとか(とにかく指導者側から見ていろいろ好都合だったそうな)。
古来から文語体で書かれてきた文章が口語体化される過程(明治末期の言文一致運動)では、試行錯誤ゆえに今見ると笑っちゃうような文章が大真面目に書かれていた(「ござる体」「かッた体」「棒引きかなづかい」など)とか。
こういった歴史的な背景を読むと、何事も様々な議論や試行錯誤を経て形作られてきているわけで、それを知らずに「今」だけを見て批判するのはナンセンスなんだな〜なんて思った私でありました。
ちょっと読むのに時間のかかる1冊でしたが、情報盛りだくさんで読み応えはありました。
文章の歴史に興味のある方はぜひ♪
書評本つながりでおススメの本
数か月前から斎藤美奈子さんの著作を読み始めて、「書評本」というジャンルの奥深さに魅せられている私なのですが、最近読んでとっても良かった書評本がコチラ。
「考える人」という雑誌(2017年に休刊)の編集長であった河野通和(こうのみちかず)さんが、メールマガジンのために書いていた書籍の紹介を1冊の本にまとめたものだそうです。
斎藤美奈子さんはわりとシニカルで批判的な立ち位置で書評を書かれるのですが(それはそれで面白いですけどね)、こちらは真逆で対象の本への愛情と敬意に満ちた書評本なのです。
著者自身が1冊1冊に魅力を感じていて、その魅力を伝えようと心を込めて書いているのが伝わってきて、その文章を読んでいるだけで涙が出てきてしまいます。
書評で泣かせるってスゴイな!!と思わずうなってしまう、書評本としては珠玉の1冊です。
書評好きの方だけでなく、心震える1冊に出会いたい方にもぜひおススメ♪
以上、【文章読本さん江】読書感想でした!
最後までお読みいただきありがとうございました♪
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