若さゆえの名作。【ナラタージュ】島本理生

小説
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2020年、23冊目の読書感想です。


ナラタージュ (角川文庫) [ 島本理生 ]

ファーストラヴ」で第159回直木賞を受賞された島本理生さんのザ・恋愛小説。
島本理生さんの本、初めて読みました。

2017年に松本潤さん&有村架純さんで映画化されているので、こちらのイメージの方が強いですかね。
え?私だけ?

私は映画化で書名を知ったので最近の本だと思っていたのですが、出版は2005年と結構前だったんですね~。

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ザ・恋愛小説

ところで、普段、恋愛小説って読みます?

私は子供を産んだ頃から、恋だの愛だのという甘い世界が自分の暮らしとほど遠くなりすぎて、ストーリーのメインに「恋愛」が据えられている小説はほとんど読まなくなってしまいました。
子供のウ○チやイヤイヤと向き合う日々とのギャップが激しすぎて、恋愛小説には感情移入しにくいのよ。

なので、なんだかすっごく久しぶりにこうした王道の恋愛小説を読みました。

あんまり期待してなかったんですが・・・。

意外と良かった(*‘∀‘)

物語の主人公は、大学2年生の泉。
そして、彼女の高校時代の恩師である葉山。
そう、いわゆる「教師と生徒の禁断の恋」モノであります。

泉の在学中からお互いに特別な思いを抱きつつも、葉山には秘密にしている悲しい過去があり、教師と生徒以上の関係に発展することは叶わないまま泉は高校を卒業。

一年後、大学生活を送っていた泉の元に、葉山から、高校時代に所属していた演劇部の練習に協力して欲しいと電話がかかってきたところから物語が始まります。

泉に思いを寄せる大学生の小野の存在を交えつつ、再会により距離を縮めていく2人の関係はどこに向かうのか・・・。

てな感じのストーリー。

タイトルの「ナラタージュ」というのは、「ある人物の語りや回想で過去を再現する手法」のことだそうで、言葉どおり泉の回想という形で物語は綴られていきます。

若さゆえの名作

こうやってストーリーをサクッと書くとベタに思えますが・・・。
そう、確かに「教師と生徒」「成就しない純愛」という設定や展開は、ベタと言えばベタなのです。スミマセン。

葉山の過去や、問題を抱えて不幸な道を選ぶ後輩など、重いテーマも盛り込まれているのですが、物語の本筋は泉と葉山のどっちつかずの煮え切らない関係に終始していると言ってもいいでしょう。

でも、何と言うか・・・、大人になると握り潰してポイッと投げ捨ててしまいそうな繊細な感情を、丁寧にすくい上げて書いていて、なかなかに引き込まれるものがありました。

この本を書いたとき、著者の島本さん自身もまだ大学生だったそうで、それを知ってとても納得感があったというか・・・。
この年頃の感情描写の細やかさは、もっと年齢を重ねてしまったら書けない文章かもしれないな~なんて感じたんですよね。

結局のところ葉山という男性は、(身も蓋もない言い方をすれば)「泉のことは好きだけど、付き合えない事情があるので、曖昧な距離感で関係を切らさない」という「ズルい大人」なわけで、これを「大人」目線で文章化したらもっとイラッとする存在になってしまったと思うんですが。

あくまで泉自身の目線で描かれるので、そのズルさは優しさとして捉えられる。
それが「若気の至り」的な痛々しさを感じる描写にならないのは、島本さん自身の若さゆえの感性によるのではないかな〜なんて思ったのです。
うーん。言葉にするのが難しい!

そういうわけで、若干斜に構えながら読み始めたのですが、意外と世界観に引き込まれて一気に読んでしまいました。

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小野くんのリアル

そんな(どんな?)ナラタージュですが、私的に一番感情の動きのリアルさにシビれたのは、泉でも葉山でもなく、泉に思いを寄せる大学生の小野くん。
急に「くん」付けで失礼します。

泉は葉山のことが心にありつつ、それでもいいと言ってくれた小野くんと付き合うのですが、途中までこの小野くん、優しさと清潔感にあふれた、100点満点で言ったら1000点の健全な男の子なんですよね。

超絶余談ですが、この「100点満点で1000点」という名言は、JAXAのはやぶさプロジェクトの津田雄一プロジェクトマネージャーの言葉でして。

私の中では、この発言時の津田さんの超嬉しそうな表情とともに、歴史に残る名言としてノミネートされているんですが、意外とみんな知らないんですよね・・・。
一度動画見て欲しい・・・。
この津田さん、他にも名言たくさんあるんですよ!!。

あ、話が逸れましたね。ほんとだよ。

えーと、何でしたっけ。

そうそう、そんな1000点の小野くんなのですが、泉の心にいつまでも葉山がいることに苦しみ、段々攻撃性を増していくのです。
泉のことは好きなのに、好きだからこそ、自分でも抑えられずに荒々しい態度を取ってしまう・・・。

そんな自分に戸惑って、気弱さと荒々しさの間を揺れ動く小野くんの不安定さがめちゃくちゃリアルで。

DV男ってこんな感じなのかしら?

と、暴力をふるった後に泣いて優しくなるDV男の心理が、ちょっと垣間見えたような気がしちゃいました。
小野くんは暴力を振るうわけじゃないですけどね。

泉と葉山の関係よりも、この小野くんとの別れのシーンが、一番の泣き所だと思います!!
切なさがハンパねぇんですよ。

泉の同級生や後輩など、登場人物は結構いるのですが、いっちばん人物がリアルに書けている&男女問わず感情移入してしまうのは小野くんだと思います。
ぜひ、小野くんに着目して読んで―!!!

おススメ脳内キャスティング

ということで、久々の恋愛小説、意外と楽しみました♪
今の自分からはほど遠い、20歳前後の女性の恋愛小説というのが逆に良かったのかもしれません。
大人の恋愛モノだったらツラくて読めなかったかも・・・?

ちなみにさ、映画→小説の順で知ったので(映画見てませんが)、どうしても登場人物を映画のキャストのイメージで思い浮かべながら読み進めちゃうんですけど、有村架純ちゃんが泉のイメージにドンピシャすぎて、奇跡のキャスティングだなと思いました。

でも葉山を演じるマツジュンはちょっとイメージと違って・・・。
実際映像見たらまた感じ方違うかもしれませんが。

私は葉山は勝手に高橋一生さんのイメージ映像で読みました。

めちゃくちゃどうでもいいことでスミマセン。

脳内で勝手に女優さんや俳優さんをキャスティングして読むと、楽しさ倍増かもしれません(*´▽`*)

島本理生さん、次は直木賞受賞作のコレも気になりますね。

以上、【ナラタージュ】読書感想でした!

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