良くも悪くも連ドラ的。【終わった人】内館牧子

小説
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2ヶ月ほど読書記録を書けていなかったのですが、スローペースでちょこちょこと読書はしていまして。

各々の読書記録をちゃんと書こうと思うと、ハードルが高くなってどんどんたまってしまうので、しばらくは簡単なメモ的に感想を残そうと思います。

ということで。

2020年、34冊目の読書感想です。


終わった人 (講談社文庫) [ 内館 牧子 ]

大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられ、そのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?ある人物との出会いが、彼の運命の歯車を回すー。日本中で大反響を巻き起こした大ヒット「定年」小説!

内容紹介(「Book」データベースより)
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エリートサラリーマンの余生

脚本家の内館牧子さんによる、エリートサラリーマンの定年退職後のあがきを書いた小説です。映画化もされていますね。

内館牧子さん、少し前に読んだこちらの本がとーっても良かったので。

小説も読んでみたいと思って手に取った1冊です。

サラリーマンの「定年後」に着目しているのが、大企業の社員出身である内館さんならではですかね~。

序盤で展開される、現役時代の感覚から抜け出せない自分と、「終わった人」として扱ってくる周囲とのギャップに苦しむ心理描写はとってもリアルで、他人事とは思えないのですが。

でも、そうやって「等身大」の人間のあがきをリアルに描いていく小説なのかと思いきや、中盤からかなりダイナミックに話が動いて、まず一般人では経験しないであろうドラマチックな展開になっていきます。
ちょっと読んでいて「しょせん作り話だわね」と思わずにはいられなかった・・・。

ストーリー自体は先が気になってどんどん読み進めてしまうくらい面白くはあるのですが、何となく普通の小説とは違うな~という違和感が読みながらずっとあって。

その違和感の正体に、読み終わったときに気付きました。

これは小説っていうより連ドラのノベライズだわ。

と。

連ドラ的アップダウン

何と言うか、盛り上がりポイントの現れるタイミングが、10回前後で放映される連ドラの各話に盛り込まれる山場っぽいというか。
予想外の展開で話がひっくり返るシーンが、ことごとく「映像での見え方」を意識した描き方になっているというか。

特に、主人公が秘かに思いを寄せていた女性が、思いもかけない人物の恋人だったことが発覚するシーンがあるのですが、もうこのシーンとかほーんとドラマ的で、テレビでの映像が目に浮かぶようでした。
そういう意味では描写力がすごいとも言えますね。

うまく言えないのですが、読み終わった後の感覚は「あー面白い本を読んだ!」というより「なかなか面白い連ドラだったね」という感じ。
そう捉えると、ほとんどの人にはあり得ない展開もまぁありかなとは思えてきますね。映像のドラマだと、普通の人のリアルな感情だけを描いたって面白くないですからね。

良くも悪くも「脚本家の書く小説」という1冊でした。
ライトに楽しめる1冊ではありますが、「小説」好きには物足りないかも?なんて思った私です。

以上、簡単ですが【終わった人】読書感想でした!

コメント

  1. 水円 岳 より:

     わたしもちょうど読み終わったところだったので、やっこさんの指摘に思わず「うんうん」と。わたしも主人公とほぼ同年代。どこまで自分と重ねられるかなあと思いながら読み始めたんですが……。

    「世間ずれしきった上級国民の話じゃん。だめだこりゃ」

    (^^;;

     内館さんが誰に読ませようとして書いた話なのかが、ちっともわかりません。主人公を道化にする話は……ちょっとね。戯曲としてもいただけないと思います。(^^;;

    • やっこ やっこ より:

      水円さん

      コメントありがとうございます!わわ、同じタイミングとは奇遇ですね!

      そう、まさに「上級国民の話」という感じですよね(;’∀’)
      普通の人があがきながらも「終わった人」としての暮らしを受け入れていくストーリーなのかと思いきや、そういう展開になっちゃうんだ・・・という感じで。
      リアリティだけが大事ではないですが、テーマ的にはもうちょっと一般的な目線だと良かったなぁと残念に思いました。

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